【歌詞とMV考察】菅井友香&守屋茜「ヒールの高さ」。目線の高さに何を思う | のら猫ひろしが坂道のぼる (のら猫ひろし)

【歌詞とMV考察】菅井友香&守屋茜「ヒールの高さ」。目線の高さに何を思う

歌詞の意味を考察・・・ヒールの高さに思ったこと


社会の厳しさ

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ヒールということで、主人公は求職中の学生か、社会人のどちらかということになります。 ヒールを履くと、少し目線が高くなることは想像できました。 その高さに、何かを思っているから、「ヒールの高さ」というタイトルになっているのでしょう。 主人公は、ヒールを履いたことで変わった目線に、何を感じたのでしょうか。 求職中であれば、その高くなった目線が辛いのかなと考えてしまいます。 社会人であれば、学生とは違った世界に、誇らしさや厳しさを感じたのではないでしょうか。 就職してまだ1年では学生気分抜けていなくて自分の肩書きを忘れてしまう 主人公は、社会人になりたてでした。 そして、次の歌詞から、彼女が、社会の厳しさに萎えているように思いました。 ヒールの高さの分だけ大人にはなったけど手の届かない何かがあるよ 就職したものの、結果を出せていない焦燥感を感じました。営業成績や職場での評価が芳しくないのでしょうか。 次の歌詞で、営業先で叱られた帰りで、肩を落としている主人公の画が浮かびました。 アスファルトは歩きにくいって今になって気づいたけれど靴擦れなんてやがて慣れるのかな 何軒も、はしごしては断れることを繰り返した後に、ベンチで溜息をついているようなイメージです。 だから、手の届かない、という歌詞は、仕事が上手くいかない主人公の気持ちが表れていると思いました。 そして、落ち込んでいる主人公の心境が、エスカレーターに溢れる人よモノクロの服は誰が選んだのか? と表現されていると思いました。 主人公は、わずかに高くなった「ヒールの高さ」から社会の厳しさを、感じていると思いました。 ネガティブな気持ちに支配されていれば、どんな物を見ても、くすんだ印象を持ってしまいます。 だから、歌詞に登場するモノクロの服は、本当は灰色ではないと思いました。 どんな鮮やかな色でも、モノクロに映ってしまうほどに、主人公は疲弊していると思います。

年齢的には、大人になっているけれども、社会が求める水準に能力が達していないという主人公の苦悩がわかりました。 その苦悩が、ヒールの高さの分だけ大人になったけど手が届かない何かがあるよ、という歌詞に集約されていると解釈します。 (歌詞考察 終わり)


駅のエスカレーターと階段のモノクロ写真


ミュージックビデオの考察



MV3分のところで、「銀河鉄道の夜」文庫本

気になるのが、MVの字幕で表れる台詞でした。

守屋さんが「もうあんな大きな闇の中だってこわくない」と言って、ソファに横たわります。

そして横を見ると、菅井様も横になっていました。

菅井様は「きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く」と言います。

守屋さんは、「どこまでもどこまでも僕たち、一緒に進んで行こう」と返しました。

すると、突然守屋さんがバスに乗っているシーンに切り替わり、「ヒールの高さ」のイントロが始まります。

そして、MV3分のシーンで、銀河鉄道の夜の文庫本が映し出されました。

ここで、ほんとうのさいわいとか、どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こうという台詞が、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に登場するジョバンニとカルパネラのそれであることがわかります。

このことを踏まえると、3分45秒のところで菅谷様を見上げた守屋さんの「ぼくはずいぶん泳いだぞ」の台詞もカルパネラを意識していますね。

そして、3分58秒のシーンにある「ほんとうのさいわいは一体何だろう」も、ジョバンニの台詞であることが理解できます。4分3秒の菅谷様「僕わからない」もカムパネラの台詞でした。

最後に、自室のソファで守屋さんは目を覚ましました。横には、猫も横たわっています。

MV「ヒールの高さ」は守屋さんの夢の中

「銀河鉄道の夜」の列車に乗る人間はジョバンニ以外は亡くなっていると考えられます。

そして欅坂46の「黒い羊」は舞台そのものが、あの世という設定でしょう。

ですから、「ヒールの高さ」も、あの世が舞台なのかなと思ってしまいました。

ですが、実際は、銀河鉄道の夜のジョバンニが夢を見ていたのと同様に、守屋さんも夢を見ていたという内容でしたね。

だから、ペットの猫が菅井様の姿をして守屋さんの夢に出てきたのでしょう。

「ヒールの高さ」のMVでは、ほんとうのさいわいは一体何だろうという問いに、僕わからないという返事で終わっています。

「ほんとうのさいわい」とは、どういう意味でしょうか。その答えは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にあります。


■ヒールの高さ■
欅坂46ユニット曲「ヒールの高さ」は、2019年2月に発売された8枚目のシングル「黒い羊」のカップリング曲でした。

歌詞は秋元康さん。歌唱メンバーは、菅井友香・守屋茜の2人です。




銀河鉄道の夜まとめ


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のら猫ひろしは、「銀河鉄道の夜」を青空文庫で読みました。kindleで読めます。

青空文庫の「銀河鉄道の夜」は9章から構成されており、それぞれのタイトルと簡単なあらすじを書いてみました。

「銀河鉄道の夜」を知ると、菅井様と軍曹あかねんの「ヒールの高さ」を楽しむことができます。


1章 午後の授業

天体の授業で、ジョバンニは先生の質問に答えられません。ザネリは振り返ってジョバンニを見てくすっと笑います。カムパネラは答えませんでした。

2章 活版所

ジョバンニは活版所で、虫めがね君お早うと馬鹿にされます。

3章 家

ジョバンニが帰宅します。寝込んでいる母に、ジョバンニはクラスメイトに馬鹿にされたことを話します。そしてカムパネラは、ジョバンニを馬鹿にしないということも話しました。

4章 ケンタウル祭の夜

ケンタウル祭に行こうと町の坂を下ったジョバンニは、途中で、ザネリにからかわれます。祭りの会場とは反対方向の丘へ向かいました。

5章 天気輪の柱

ジョバンニは丘の上にある天気輪の柱で寝転びます。汽車の音が聞こえてきて、旅人が笑ったりしているような想像をしては寂しい気持ちになりました。そして、昼間の授業を思い出して落ち込みます。

6章 銀河ステーション

眼前がぱっと明るくなったかと思うと、ジョバンニは列車から外を眺めていることに気づきました。またカムパネラがいることに驚きます。カムパネラは青ざめて苦しそうでした。

7章 北十字とプリオシン海岸

カムパネラが咳き込みながら突然、おっかさんはぼくをゆるしてくださるだろうか、おっかさんがほんとうに幸いになるならどんなことでもすると言いました。
青白い島に近づき、車室の旅人たちが祈り始めます。その島を過ぎると、白鳥の停車場に着きます。
ジョバンニたちは降車して歩いていきます。プリオシン海岸で獣の骨を発掘する大学士に出会います。この骨は牛の先祖という説明を受けたジョバンニは、カムパネラに時間だよと促されて再び列車に乗ります。

8章 鳥を捕る鳥捕り

ジョバンニは赤ひげの人に話しかけられます。赤ひげは、商売で鶴や雁(がん)、さぎ、白鳥を捕まえていると言いました。もらった黄色の雁の足は、チョコレートよりもおいしいものでした。

9章 ジョバンニの切符 

列車はアルビレオの観測所に着きました。赤い帽子を被った車掌に鳥捕りやカムパネラが切符を出します。ジョバンニが慌てていると緑色切符がいつのまにか上着のポケットにあることに気づきました。

鳥捕りが去って代わりに6歳くらいの男の子が震えながら、はだしで立っていることに気づきます。隣には青年が男の子の手を取っていました。青年の後ろに、12歳くらいの女の子がいます。男の子の姉でした。青年は、乗っていた船が氷山にぶつかったと言います。そして、いつの間にかここにいたとのことでした。

かおる子とカムパネラが鯨の話をしています。それを見てジョバンニはいらいらしました。かおる子が、サソリの火について話しだします。サソリは良い虫だと言いました。サソリは、井戸に落ちた時、みんなの幸いのために私のからだをおつかいくださいと言ったからです。

列車はサウザンクロスに近づきジョバンニは青年と一緒に、神に祈ります。青年たちが降りていって、カムパネラとジョバンニは二人きりになりました。カムパネラが窓を指さして、あそこにいるのはぼくのお母さんだよと言います。窓の外はぼんやり白く煙っているだけでした。ジョバンニが窓から視線を戻すと、カムパネラの姿がありません。

すると、やせた大人が現れて、ともだちはいないと言います。そして、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがせばカムパネラと一緒に行けるのだと言いました。カムパネラのためにみんなのためにほんとうのほんとうの幸福をさがすぞと言います。

ジョバンニが眼をひらきます。もとの丘の草の中でした。泣いていることに気づきます。丘を下ると、7、8人の女たちがひそひそしていました。

女たちは子どもが落ちたと言います。ジョバンニは、橋へと走りだしました。途中でマルソに遭遇します。彼は、カムパネラがザネリを助けるために川へ入って戻らないと言いました。ザネリを舟に押したカムパネラが見えなくなったとのことです。カムパネラの父が45分経過しているから息子は助からないと言いました。

ここで、男が登場し、ジョバンニの父から元気な便りを貰ったと聞きます。ジョバンニは、父が帰ることを知らせようと母がいる街へ走り出しました。

終わりに


宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、ジョバンニの夢のお話ですね。氷山にぶつかって船が沈み、いつの間にか列車にいたという青年や、髪を濡らした男の子、カムパネラが青ざめて苦しそうだったり咳き込んでいたことから予想できるのは、彼らがすでに亡くなっていたことですね。

青年の、船が氷山にぶつかったという台詞からわかることは、タイタニック号の事故に遭って亡くなったことです。

カムパネラが、ザネリを助けるために川へ飛び込んで戻ってこない事実は、サソリが体をお使いくださいと言って燃えるエピソードに似ています。

このことから「ヒールの高さ」の、「ほんとうのさいわい」の意味がわかります。「ほんとうのさいわい」は人のために行動した人に訪れるものだということになります。  終わり